なぜ人は疲れると海が見たくなるのだろう?

なぜ人は海を見たくなるのだろう?

海の青さに癒しを求めるのだろうか?潮の香りや波の動きに非日常を感じるのだろうか?

「いやいや、疲れても海を見たくなんてならない」という人もたくさんいるだろう。まぁべつにその対象は海じゃなくたっていい。

誰にだって、どうしようもなく疲れた時や、何かに嫌になった時に、行きたくなる場所ややりたくなることの一つや二つはあるだろう。誰かにとってそれは海に行くことで、また別の誰かにとってはカラオケだったり、ヤケ食いだったりする。

別に私だって、疲れた時にいつでも海に行きたくなるわけじゃない。というより、どちらかと言うと、海が嫌いだ。

海水なんて触ってしまった日には最悪な気分になる。ジャリジャリしていて、ベタベタもしている。

だから海なんてよほどのことがない限りは行かない。ところがここ最近嫌なことが続いて、人生に疲れて、「何かどうでもいいな」と思っていた時に、何かと頭に海がチラついた。

なぜ人は海に行きたくなるのだろう?

人生に効率や意味ばかりを求めると、日常はつまらなくなり、かえって生産性は落ちていく。最近の発見はこれだ。ただ海辺を歩いたり、メダルゲームに必死で稼いだお金を吸い込まれるような無駄な時間が時には必要だと思う。

黄昏るには歳を取り過ぎているし、風情を味わうには若過ぎる。きっと何かと中途半端な年頃なのだろうと思う。

情報を詰め込み過ぎて混乱していた脳が、洗われていくような気がした。

世界はこれから大不況に突入していく。誰も経験したことのない世の中が待っている。明日は見えないし、将来に希望も持ちづらくなる。バブルで粋がっていた奴らがビックリするくらいに、今の若者は堅実だ。堅実にならざるを得ないくらい、切羽詰まっている。昼代が勿体ないから、家を出る前に昼を食べてきてやった。先が見えない今に絶望して、若くして人生というゲームから降りていく人たちもいる。

高校生の頃、ゲーテの『ファウスト』を読んだ。

内容はほとんど忘れてしまったけれど、ずっと忘れられない一節がある。

『ファウスト』は、主人公のファウストが悪魔メフィストフェレスと契約を交わし、様々な経験をしていく物語です。ファウストは、旅の過程で出会ったマルガレーテという少女と恋に落ちるのですが、マルガレーテはファウストと関わったことで、亡くなってしまいます。

亡くなってしまうといったら悲しいことですが、亡くなってしまうその時、なぜかどこからか”救われたのだ”という声がするのです。

死んでしまったのに”救われた”とはどういうことだい?と高校生の頃の私は思いましたが、それからもずっとずっとこの一節について自分なりの仮説を立て続けてきました。

一つの答えとして、生と死との違いに取り立てて意味はなく、希望と絶望はコインの裏表のようなものである、ということを歳を取る度にひしひしと感じています。

故人を悼むのは残された者たちの宿命ですが、一方で故人は救われているかもしれないのです。そのへんは、残された者たちには永遠にわからないことです。

世界は大不況に足を踏み入れている最中ですが、ウソみたいに波は穏やかで、それを眺めるカップルや家族も穏やかでした。

そっか、みんな穏やかでいたいんだな…

テレビを点けたら、現実に引き戻される。会社に行ったら、「うちの会社だって他人事じゃない」とか言われる。いつクビになるかわからないぞ?みたいなかんじで脅される。

みんな穏やかな気持ちでいたいんだ。だから人は海を求めるのだろう。

無職の頃に、たまーに平日の昼間に公園に行っていました。平日の昼間、よく晴れた午後の公園に行けるのは、無職の特権です。そこにはいつも穏やかな時間が流れていた。

そこは”平和”って言葉がピッタリの場所だった。あんなふうに人が生きていくことができるのなら、人間も悪くはないなと少しは思えた。だから平日の昼間の公園が好きだった。

海には同じような時間が流れている。

潮の匂いと波と、どこまでも続く青さは、もしかしたら人間の暴力性や衝動を抑えてくれるのかもしれないと思う。みんな本当は穏やかな気持ちでいたいんだ。

人は海に救いを求める。人は海に恋をする。もしかしたら、どこまでも広がる海の青さや、潮の香りや波の動きが、人生を変えてくれるかもしれないと思い込む。私もそう思った。だから海を見たくなった。無性に海を見たくなった。足りないのは”無駄”だと直感的に感じた。

なぜ人は海を見たくなるのだろう?

人は海に何を求めるのだろう?

わからない。わからないから海を見たくなった。わからないけど、海に行ってみたら穏やかな気持ちになった。人は海に穏やかさを求める。きっとそれが答えなのだろう。だから人は海を見たくなるのだろう。

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