橘玲氏の『無理ゲー社会』についてのレビューです。
『無理ゲー社会』

『無理ゲー社会』は、
人気作家 橘玲さんの本です。
2021/8に発売された本で、発売された当初は、書店の新書売上ランキングでしばらく上位になっていました。
めっちゃ売れているということですね。
「自分らしく」を追求できるリベラルな社会の、負の側面(「格差」や「遺伝」)について書かれた本です。
ある政治家がSNSで「あなたの不安を教えてください」と訊いたところ、「早く死にたい」「生きる意味がわからない」「苦しまずに自殺する権利を法制化してほしい」との要望が殺到した。これはディストピア小説ではない。日本の話だ。
『無理ゲー社会」橘玲 小学館新書 2021/8/3 p3
橘さんはマーケター?それともネガティブな人?
まず読んで思ったのは、この時期に有名作家がこのテーマ(格差や貧困)で本を書いたら、「まぁ売れるだろうな」ということです。
理由は、職を失ったり、生活が苦しくなったりで、苦しい状況に追い込まれている人が増えているからです。
ただ、本当に苦しい当事者は本を買えないので、「自分も落ちてもおかしくない」と思っている人や、生きづらさを感じている人たちが読んでいるのだと思います。
橘さんの本は他にも何冊も読んでいますが、
全体的に暗めなテーマが多いです。
橘さん自身は成功者に分類される人だと思いますが、『無理ゲー社会』や過去の本を考えると、すごい根暗な人なんじゃないかな?と最近は思っています。
あるいは、世の中の空気感を敏感に感じ取る優れたマーケターか。
暖かい部屋の中で書かれましたというかんじの本
『無理ゲー社会』の内容についてですが、読む前と読んだ後で「とくに何も変わらない」タイプの本です。
要は、「内容が薄い」ということです。
橘さんは、非常に頭が良くて、おそらく相当な読者家なのだと思いますが、橘さんの本の傾向として、「自分の意見がない」というのが読んでいて感じます。
「こういうすごい人がいて、彼はこう言っている」みたいな話で、一冊本を書いているようなイメージです。
『無理ゲー社会』のような本であれば、実際の当事者にインタビューしたり、苦しんでいる人の生活現場を見ても良さそうなものですが、参考文献を片っぱしから集めて、暖かい部屋の中で書かれたような印象を受けます。
また、橘さんの本は全般的に、話がポンポンと別のところに飛んでいく文章展開なので、読んでいてけっこう疲れます。
この本に関してはとくに。
貧困とか格差とか、実際の日本社会を知りたいなら、フィールドワークを得意とする著者の本を読んだほうが勉強になります。
ちなみに、『無理ゲー社会』は微妙ですが、橘さんの本では、以下本がめちゃくちゃ面白いです。
- お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ
- 貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する
頑張っても無駄な社会?
ただ、取り上げているトピックについては、他の人が表立って言わないようなものも多いので、読んでいて勉強になる点もあります。
- 資本主義とはどんなシステム?
- 遺伝で人生は決まるのか?
遺伝の話になると、「でも努力でなんとかなる」と言う人もいますが、私自身は遺伝の影響はかなり大きいと考えています。
仮に、「やる気」や「知能」も遺伝の影響をかなり受けるのであれば、低学歴の両親の子どもは努力しても無駄(勉強に関して)ということになります。
また、頑張れない人に向かって、「頑張れ」と言っても無駄ということになります。
私は、基本的に「親ガチャ」や「遺伝説」は正しいと思っていて、「幸福が幸福を生み」「不幸が不幸を生む」と考えています。
ですので運転免許証のように、子どもを産むのにも何らかの資格を設けるべきだと考えています。
反対派が多すぎて法制化するのは無理でしょうが。