ウェブアクセシビリティへの対応は義務?対応するメリットも解説

「最近ウェブアクセシビリティってよく聞くけど、何のこと?」

「改正障害者差別解消法によって、ウェブアクセシビリティって義務化されたの?」

Web業界で働いている私が、解説します。

目次

ウェブアクセシビリティへの対応は義務?

結論から申しますと、現時点ではウェブアクセシビリティへの対応は努力義務です。

対応していないからといって、どこかの組織から何かを言われるわけではありませんし、GoogleのSEOや広告的な視点からも、特にペナルティがあるわけではありません。

ただ、Webを取り巻く状況の変化に対して敏感な企業や、社会的な信用を求められるような組織などは、対応し始めています。

そして、今後この流れは加速していくはずです。完全な義務になるかは疑問ですが、例えば上場している企業に関しては、対応していて当たり前みたいな状況にになるかもしれません。

もしもあなた制作会社などで働いているなら、ウェブアクセシビリティに対応できることは強みになります。今でも需要はありますが、対応できる人は限られているからです。

アクセシビリティとは

そもそも、アクセシビリティとは何のことでしょうか?

簡単に言うと、
情報へのアクセスのしやすさのことです。

ウェブアクセシビリティについては、これまでも言及されていましたが、2024年4月1日の改正障害者差別解消法によって、より注目されるようになりました。

 2024年 4月 1日から改正障害者差別解消法が施行され、事業者による障害者への合理的配慮が義務化されます。そして、ウェブアクセシビリティへの取り組みは、合理的配慮を提供するための環境の整備として努力義務が課せられています。

ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック

ウェブにおけるアクセシビリティ

ウェブにおけるアクセシビリティとは、例えば、視覚障害のある方でも情報にアクセスできるように、スクリーンリーダーで読み取りやすい文書構造にするとか、キーボードのみでフォーム入力などをできるようにするといったことです。

ガイドブックによると、ウェブアクセシビリティの恩恵を受ける人たちは、日本だけでも428万人以上いるとのことです。

  • 視覚障害のある人
  • 聴覚障害のある人
  • 視覚と聴覚両方に障害がある人
  • 上肢障害のある人
  • 発達障害や学習障害のある人
  • 色覚特性がある人
  • 高齢者
  • 一時的に障害がある状態の人(イヤホンを忘れた、ケガをした、眼鏡を忘れたetc.)

ウェブアクセシビリティに対応することのメリット

法律による努力義務というと、対応がめんどくさいと思うかもしれませんが、ウェブアクセシビリティへの対応は、べつにデメリットではありません。

誰もが使いやすいサイトになる

ウェブアクセシビリティへの対応は、要するに誰もが使いやすいWebサイト(アプリ)にするということです。

たとえばスマホでWebサイトを閲覧したときに、若い人であれば、多少文字が小さくても問題ないかもしれません。

でも歳をとって視力が落ちていたりすると、スマホの小さい文字は読みづらいです。

これを回避するために、フォントを調整することもウェブアクセシビリティのひとつなのですが、対応することによって、本来離脱してしまっていた人たちが、ちゃんと記事を読んでくれたり、商品を買ってくれたりするかもしれません。

例えば、ECサイトでも、キーボードで操作できるECサイトとそうじゃないサイトがあったとしたら、キーボードで操作しているユーザーは、間違いなく前者で購入するはずです。

これはサイト管理者や企業にとってメリットのはずです。

誠実な企業というブランディングになる

誰もが同じように感じるわけではないですが、ちゃんとウェブアクセシビリティに対応したWebサイトを持っている企業に対して、好印象を抱く人たちもいるはずです。

求職者や顧客、少なくとも、ウェブアクセシビリティの当事者になる人たちは、好印象を抱くはずです。

今は大企業をはじめとして、多くの企業がcookieの同意やウェブアクセシビリティへの対応を始めています。

この流れに取り残されると、
対応しないことが悪印象になります。

たとえば、いまだにSSLに対応していない企業もありますが、そういった企業の場合、フォーム送信時に情報を抜き取られる可能性があります。

こういったリスクをユーザーに負わせている企業が、信用されるとは思えません。ウェブアクセシビリティへの対応も、自発的な義務化の流れになっていくと思われます。

SEO的にもメリットがある

SEO的にも、ウェブアクセシビリティへの対応は効果的だと思います。

これは私の考えなので、Googleなどが正式に公表しているわけではありません。

私がウェブアクセシビリティへの対応がSEOに有効だと考える理由は以下です。

  • ウェブアクセシビリティへの対応によって、誰もが使いやすいサイトになる
  • 直帰率、離脱率が改善する
  • 回遊率や滞在率が良い数値になり、Googleに良いサイトだと認識される
  • 掲載順位が上がる

ウェブ制作業界にいる人たちに求められること

さいごに、この記事を読んでいただいているWeb業界で働いている方用の情報です。

それぞれの職種ごとに、ウェブアクセシビリティにおいて何が求められているのかを、ガイドラインに沿ってまとめておきます。

フロントエンジニアに求められること

これまでのように、見た目がデザインカンプ通りならOKという考えは捨てる必要があります。

スクリーンリーダーなどで読み取られた際に、順番がゴチャゴチャで意味が通じないケースが発生するからです。ちゃんと構造を考えてマークアップをする必要があります。

あわせて、以下のようなことも考える必要があります。

  • キーボードだけで開いたコンテンツなどを閉じられるようにする(モーダルダイアログなど)
  • カルーセルエリアに停止ボタンなどを設ける
  • 画像に適切な代替テキストを設定する
  • キーボードだけですべての要素を操作可能にする
  • 見出し要素へのラベル付けをわかりやすくする
  • ブラウザの文字拡大機能を無効化しない

デザイナーに求められること

  • 文字と背景のコントラスト比など、配色設定に気をつける
  • 利用者がフォント設定を変更している可能性を意識してフォントデザインを考える
  • リンクテキストやボタンの遷移先をクリック前にちゃんと把握できるようなデザインにする
  • メニューの要素に一貫性を持たせる(ヘッダーメニューとフッターメニューで要素の順番を変えない)

ディレクターに求められること

ディレクターは、設計の要となるポジションなので、他のポジション以上にウェブアクセシビリティへの理解が必要です。

何よりもまずは、どんな人たちがウェブアクセシビリティを必要としているのかを知ることが大事です。そしてどこまで対応していくのかを、予算や工数と照らし合わせながら決めていきましょう。

ウェブアクセシビリティの世界基準

ウェブアクセシビリティに対応するためのガイドラインです。

WCAG

W3Cが策定しているガイドラインです。

ウェブコンテンツアクセシビリティガイドライン 2.2

JIS X 8341-3

ウェブアクセシビリティに関する日本の工業規格です。

ウェブアクセシビリティへの対応テスト

ウェブアクセシビリティに対応する中で役立つツールです。

ウェブアクセシビリティ基盤委員会のチェックリスト

JIS X 8341-3:2016 試験実施ガイドライン(達成基準チェックリスト)

axe DevTools – Web Accessibility Testing

グーグルの拡張機能です。

axe DevTools

【axe DevToolsの使い方】

1.拡張機能を有効にします

2.テストしたいWebサイトを開き、Googleの検証ツールを起動します。

3.右上の>>をクリックして、axe DevToolsの画面を開きます。

4.同意確認の画面が表示されるので、自身のポジション(なんでもOK)を入力して、同意ボタンを押します。

4.下記画像の箇所から設定画面にいけるので、Languageを「日本語」にします。

5.左下のScanボタンを押せば、解析が始まり、データが表示されます。

すべて完璧にこなす必要はない。誰もが情報を得やすいサイト、アプリを作る努力をしていこう

現時点ではまだ、ウェブアクセシビリティへの対応は努力義務です。

また、すべての項目に対応するのは難しそうです。

WCAG 2.0 解説書の中でも解説されている通り、コンテンツの中には適合レベル AAAの達成基準をすべて満たすことができないものもあるため、AAA準拠を目指すことは推奨されていません。

ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック

デザインやコーディングの都合上、
完璧にできないこともあります。

でも誰にとってもわかりやすくするように意識して、それぞれのポジションの人たちが制作することはできます。

とにかくまずは、ウェブアクセシビリティを必要としている人たちがいることを知ること、対応のために技術や知識レベルを高めていく必要があることを知りましょう。

もしよろしければシェアお願いいたします。
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