コーディング工数見積もり入門 ― Web制作で迷わないための基本

この記事を書いた人:青山
Web制作エンジニアマーケター(広告・SEO・アクセス計測・改善提案)・ライター
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Web制作の世界に足を踏み入れて最初にぶつかる壁。
それが「見積もりの出し方」ではないでしょうか。

「このページ、何時間で終わるんだろう?」
「他の人はいくらで出してるんだろう?」
「AIを使ったら早く終わるけど、その分安く出すべき?」

そんな迷いを抱えたまま、なんとなく金額を出してしまうと、後で赤字になったり、納期が崩れたりする原因になります。

私自身、何度も悩みましたし、正直なところ、いまだに絶対的な正解はわからないままです。

でも何度も経験する中で、妥当な金額を算出することができるようにはなっています。

この記事では、初心者やフリーランスが迷いがちな「コーディング工数の見積もり方」を、

  • 時間ベース
  • 機能ベース
  • AI時代の考え方

の3つの軸から整理して解説していきます。

目次

コーディング工数見積もりとは?

まず、前提から整理します。

「工数」とは、人 × 時間(=人が作業に費やす時間)を指します。

1人が1時間作業したら「1人時(にんじ)」、1日作業したら「1人日(にんにち)」と呼ばれます。
つまり見積もりとは、「この作業にどれだけの時間と労力が必要か」を可視化する行為です。

よくある失敗は、「このくらいで終わるだろう」という勘で出してしまうこと。

経験豊富な人ほど「体感」で見積もりができますが、初心者やディレクターは実際の作業時間を把握していないケースが多く、
結果として「想定より倍かかった」「修正で地獄を見た」ということになりがちです。

また、長期的に関係を築く可能性のあるクライアントについては、なんとなくで見積もりを出してしまうと、「前はもっと安かった」といったようなクレームに発展する可能性もあります。

Web制作で見積もり対象になる作業範囲

「コーディング工数」と一口に言っても、実際に何を含むかは案件によって異なります。

まずは、一般的にWeb制作で見積もり対象になる項目を整理しておきましょう。

作業項目内容の例
HTML/CSS構築デザインデータ(Figma・XDなど)をもとにマークアップ
レスポンシブ対応PC/タブレット/スマホの3デバイス最適化
JavaScriptスライダー、アコーディオン、モーダルなどの動作追加
WordPress組み込みテンプレート分割、管理画面フィールド設定
ブラウザ検証・微調整Chrome、Safari、Edgeなどでの動作確認
納品準備ファイル圧縮、ディレクトリ整理、軽量化

まず大事なのは、クライアントの要望を全て洗い出すことです。

要件が明確でないと、
見当違いの見積もりを出してしまいます。

また、「これも含まれてると思ったんだけど…」と言われて、仕方なく無料対応するケースも起こり得ます。

なので、全ての項目を洗い出して、
その上で工数を算出していきましょう。

見積もり方法は2種類:「時間」で出すか「機能」で出すか

見積もりには大きく2つの考え方があります。

① 時間ベースで出す方法

最もオーソドックスな手法です。
「作業にかかる時間 × 時間単価」で金額を算出します。

【メリット】

  • 見積根拠を説明しやすい(誰でも納得しやすい)
  • 案件ごとの複雑度に柔軟に対応できる

【デメリット】

  • 作業スピードによって金額がブレる
  • スキルが高い人ほど「早く終わる=安くなる」という矛盾が起こる

よくある悩みが、「一般的な目安」で出すべきか?
それとも「自分のスピード感」を基準に出すべきか?です。

「一般的に3時間で終わる作業を、自分は6時間かかる。じゃあどう出すべき?」

結論としては、

  • クライアントが成果物重視の場合(納品ベース):一般的な時間で見積もる
  • 社内案件・準委任契約など、労働時間ベースの場合:自分の実力ベースで見積もる

デメリットでも記載した通り、自分の実力ベースで出すと、ベテランよりも新人に頼んだ方が高いという矛盾が発生します。

なので基本的には、一般的な目安を基準にした方がトラブルが少ないです。

② 機能ベースで出す方法

もうひとつの考え方は、「1機能いくら」で見積もる方法です。

機能金額の目安
スライダー実装15,000円〜
お問い合わせフォーム40,000円
ハンバーガーメニュー20,000円〜
JSアニメーション30,000円〜

【メリット】

  • 作業スピードに左右されない
  • AI活用などによる時間短縮の影響を受けにくい

【デメリット】

  • 金額の根拠を説明しづらい
  • 案件全体のボリュームを把握しづらい

フリーランスの場合は、「機能ベース+ページ単価ベース」のハイブリッド方式が最も現実的です。

トップページ・下層ページ・JSパーツなどに分けて、それぞれの単価を積み上げる形が多くなるかと思います。

生成AI時代の見積もりをどう考えるか

生成AIは非常に便利なツールですが、コーディングの見積もりに関していうと、生成AIの普及によって複雑さを増しました。

たとえば、ChatGPTやGitHub Copilotなどを使えば、以前は1人日かかっていたJSプログラムが、わずか10分で書けることもあります。

この場合、以前1人日で出していた工数を1人時にするべきか?

時間で工数を出すのなら、早く終わる=工数も短縮されると考えるのは理にかなっていますが、これは損をする考え方です。

クライアントはAIを使ったかどうかを知らない

まず大前提として、クライアントはあなたがAIを使ったかどうかを知りません。

彼らが求めているのは、「動くサイト」と「納期内の完成」で、その方法についてはあまり興味がありません。
※プロジェクトによっては生成AIの活用が禁止の場合もあります。

つまり、作業時間ではなく成果物の価値に対して報酬を払っているということです。

AIで1時間でできることを、以前は8時間かけてやっていたとしても、
成果物の価値が同じなら、見積もり金額は下げる必要がありません。

むしろ、あなたは効率化のために学習コストやツール費用を払っています。
それはスキルの一部であり、正当な努力です。

AIを使った=利益を減らすではない

AIを導入したことによって作業時間が短くなったなら、それはむしろ「生産性」が上がったという考え方をしましょう。

つまり、「同じ報酬を、より短時間で得られるようになった」のです。
これは正しい方向性です。

逆に、AIを理由に安く出してしまうと、

  • 自分の単価を下げる
  • 市場単価を下げる
  • 「この金額でやってくれる人」という誤解を招く

という三重苦になります。

AIは「コストを減らす」ためのものではなく、
「価値を高める」ための武器だという意識を持ちましょう。

AIを使う場合の見積もり基準

AIによって作業工程が変わるのは事実です。
ただし、AIがやるのは「生成」であって、「完成」ではありません。

実際の工程はこうです:

工程目安時間説明
AIによる生成0.2hコードを出力
動作検証・修正1h表示崩れや仕様調整
統合・最終確認0.5hページ全体との整合性確認
合計約1.7h「成果物を納品できる状態」にするまで

AIを使う場合でも、「使える状態にするための時間」をベースに見積もるのが正解です。

生成時間だけで算出してしまうと、必ず赤字になります。

工数を算出する3ステップ

ここからは実際に「どうやって工数を出すか」を手順で解説します。

① 作業項目を洗い出す

ページ構成・機能構成をもとに、作業を細分化します。

トップページ、下層ページ、フォーム、JS、WPなど項目ごとに書き出しましょう。

② 作業時間を見積もる

1ページあたりの時間を目安に設定します。

項目目安時間
トップページ6〜10時間
下層ページ2〜4時間
JS動作追加1〜3時間
レスポンシブ対応+30%

「一般的な時間」を基準にしてOKです。

少し時間がかかりそうだなと迷う箇所は、バッファを多めにとっておきましょう。

基本的には、バッファを抜いて安くしようか、入れて高くしようか迷ったら、高くしておいた方が良いと思います。

理由は、実際のコーディングでは、予期せぬ事態があり得るし、案件によっては、何度も修正などが発生するケースもあるからです。

※場合によっては「修正2回まで無料」など条件を明記しておくのも良いかもです。

単価と金額の出し方

工数を出したら、次は単価を掛けて金額を算出します。

【計算式】

時間単価 × 工数 = 見積もり金額

スキルレベル時間単価の目安
新人コーダー1,500〜2,500円/h
中堅フリーランス3,000〜5,000円/h
制作会社6,000円〜/h

時間単価は、会社で働いている場合は会社の規定に従い、フリーランスの場合は、好きに決めて良いと思います。

とはいえ、他のフリーランスが3,000円のところで、自分だけ10,000円にしていると、受注を逃してしまいます。

相場感よりも高くする場合には、実績など、何らかの根拠を持つようにしましょう。

案件別の工数目安

続いて、実際の工数の目安です。

制作会社の規模や、フリーランスでも、クラウドソーシングからの受注か、直接クライアントからの受注かで、料金の幅はかなり変わります。

なのであくまでも目安ですが、
一般的な例をあげておきます。

案件タイプページ数想定時間合計工数目安目安金額(デザインなし)
LP116〜24時間約2〜3日約20万円
コーポレートサイト5〜1025〜40時間約1週間約30〜60万円(1ページ6万円目安)
WordPress構築含む5〜1040〜60時間約1.5週間約50〜80万円

デザインはコーディングの2.5倍くらいになるので、たとえばLPであれば、デザイン込みで50万円になるイメージです。

見積もりテンプレートの使い方

その都度感覚で出すのを避けるためにも、スプレッドシートやExcelで見積もりのテンプレートを作っておくのがお勧めです。

項目工数(h)単価小計備考
トップページ83,00024,000レスポンシブ対応含む
下層ページ×5153,00045,000共通パーツ流用
フォーム実装33,0009,000PHP+確認画面あり
合計2678,000円

関数を組んでおき、チェックすれば最終的な金額が出るものを用意しておけば、クライアントから「以前と金額が違う」みたいなことを言われる可能性も減らせます。

まとめ

生成AIの登場で、「時間をかける=価値がある」という常識は崩れつつあります。
でも、納品物の価値は変わりません。

クライアントが求めているのは、
「きちんと動くサイト」「納期を守る安心感」「トラブルがないやりとり」です。

つまり、AIを使おうが使うまいが、それを実現できるあなたのスキルには、変わらない価値があります。

見積もりとは、「あなたの知識・技術・経験を、数値化して伝えるための道具」です。

だからこそ、

  • 勘ではなく根拠を持って出す
  • 早く終わっても安売りしない
  • 自分の仕事に対して自信を持つ

ことが大事です。

私も今でも迷います。

「この金額はちょっと高すぎるんじゃないか…」
「これ出したら他社にしますって言われるんじゃないか…」

実際、見積もり金額を理由に受注できなかったことは何度もあります。だから私自身、毎日の仕事の中で「これがベストなのか?」と試行錯誤を繰り返しています。

私の提示した方法が唯一の最適解だとは思いません。だからこそ、一緒に最適なやり方を探していけたらと思います。今回書いた内容は、私の経験上、ベストな方法をまとめたものです。

ぜひお役に立てたら嬉しいです。

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